セックスライフについて
女性のリビドー(性的エネルギー)に関るファクターとして挙げられていたのは、愛情、ムード、ストレス、疲労、文化、生活満足度、健康状態、男性ホルモンレベルなどです。 これらのファクターが複合されて、女性はセックスしたくなったり、セックスしたくなくなったりするわけです。愛情、ムードがないと女性はセックスする気にならないということに関しては、読者の方々にも納得していただけると思います。 また健康状態がよく、過度なストレスや、疲労がないことが重要なのも言われてみれば明らかです。
文化、生活満足度に関しては、日本は、かなりまずい状態です。セックスに関しては、日本は、世界でもっとも淡白な文化であることが判明しています。 もともと月に1〜2回しかセックスをしない文化の中で日本人は生きていますので、これだけで他国にくらべ男性も女性もリビドーが低くなってしまうと考えられます。 ところで“生活の質”のことをクオリティーオブライフ(QOL)といいます。QOLは、自分の生活満足度はどのくらいか?ということを、問診で測定して評価します。さて充分なお金や休みがない場合に、QOLを高めるためには、どうすればいいでしょうか? 生活満足度をあげるためにそれは日々QOLを意識する練習をすることです。意識するだけでいいのです。欧米人は、子どものときに寝る前にお祈りとかをさせられて、“感謝”と“反省”をします。つまり夜寝る前に、今日1日の自分の“生活の質”がどうであったか考える習慣がついているわけです。日本人である私達は、別にお祈りする必要はありません。しかし“今日は、満足できる1日だったかどうか?”“満足できないならば、どうしたらよいのか”を寝る前に1分くらい考える習慣をつけるようにしましょう。そうすると知らないあいだにQOLは改善していきます。 ところで脳内で性機能を維持するホルモンに関して学会の報告を参考に少し説明します。性機能をつかさどるのは何といっても脳です。この脳内で作用するホルモンは以下の3つに分類されるとされています。 (増強…性機能を高める、低下…性機能を低下させる) 1)性的意欲を左右するホルモン ●女性ホルモン(許容するために必要)増強 ●男性ホルモン(起爆剤として必要) 増強 ●黄体ホルモン(感受性を高める) 増強 ●ドーパミン 増強 2)性的興奮を左右するホルモン ●ドーパミン 増強 ●ノルエピネフリン 増強 ●5-HT 低下 ドーパミンとノルエピネフリンを介して ●プロラクチン 低下 3)オルガズムを左右するホルモン ●オキシトシン 増強 以上から理論的には、増強する物質を脳内に増やし、低下させる物質を脳内から減らせば、女性性機能障害は治療できるということになります。そのために薬が開発されています。性的意欲低下させる薬剤としては、SSRI、SNRIなどの抗うつ剤や、 低用量ピルなどが有名です。 断っておきますが、これらの薬剤を服用することによって全ての女性が性機能障害になるわけでありません。しかし明らかな性的意欲の低下が自覚された場合は、減量や中止が必要です。 一方これらの薬を性機能障害の治療薬として使用する場合もあります。慢性骨盤痛や外陰痛症候群という、性交疼痛症の原因となる病状がある場合です。人間にとって痛みはもっとも辛いものです。性的意欲障害と性交疼痛症が合併する場合には、まず性交疼痛症の治療を優先するためにこれらの薬剤を投与し、その後痛みの治療がうまくいってからこれらの薬を減量したり、中止したりします。 さて性的意欲を高める薬ですが、ほとんどの薬剤は日本未発売です。男性ホルモンジェルは、欧米では広く使用されていますが、その適正使用に関しては学会でもまだ意見が分かれています。ブスピロンという薬剤は、欧米では認可された抗うつ剤、禁煙補助剤ですが、脳内のドーパミンを上昇させ性的意欲を向上させる可能性があるといわれています。フリバンセリンという薬剤は、ホルモンでもなく、抗うつ効果もない新しい性的意欲改善薬ですが、これは承認申請段階に入っているとのことでした。 さて少し専門的すぎる話をしてしまいましたが、最後に気軽な食事療法の話題で、今回は終わりたいと思います。最近話題のメタボリック症候群も性機能を低下させることが分かっています。 Espositoらはメタボリック症候群の女性患者にMediterranean-style diet(地中海スタイルの食事)(全粒粉、くだもの、やさい、豆、木の実、オリーブオイルを主体とした食事)を2年間させてところ、メタボリック症候群が改善し、性機能も改善したと報告しています。日本人ならば、全粒粉を玄米で、オリーブオイルを胡麻油で代用してもいいかもしれませんね。 体調もよくなり、性的意欲も増せばこんなにすばらしいことはありません。試してみてください。
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