前立腺のラテント癌は臨床癌に進展するまでの期間は？

米国．前立腺癌の自然史の解明のために，剖検例の前立腺ラテント癌の頻度と，SEERのデータからの臨床癌の頻度を比較し，ラテント癌から臨床癌への進展の頻度，期間について研究した．
1941年〜1964年の剖検における前立腺ラテント癌の頻度をもとに病期A1前立腺癌の年齢調整罹患率を推定し，1960年のNCIのSEERプログラムにおける1960年〜1986年の臨床癌の頻度を比較することで，臨床癌への進展の頻度と期間を推測した．
米国黒人ではラテント癌が臨床癌に進展するまでの平均期間は7.6年〜10.4年で1975年〜1992年までの間に徐々に短くなっていった．米国白人では9.1年〜11.6年であり，1960年〜1992年の間で徐々に短くなっていった．またラテント癌のうちの約75％は臨床癌に進展しないと予測された．前立腺癌の自然史は解明されていない部分が多いが，米国白人では9〜12年と推測されている．
前立腺癌の自然史の解明は難しいが，本研究は前立腺癌の罹患率のデータとして信頼性の高いSEERのデータを用い，剖検時のラテント癌の頻度との比較により，臨床癌に進展するまでの期間を推測しており，研究手法に限界はあるものの自然史解明のための重要な研究のひとつである．