ダイエットは、言い換えれば、体の中の余分な脂肪との戦い。ところであなたは、体内の脂肪がどこにあり、どんな形状をしているか、そもそも知っているだろうか。
“対戦相手”の姿は、より具体的にイメージできた方が戦いやすいはず。逆に、相手がどこにいて、どんな姿形をしているのかを知らないままに戦いを挑んでも、文字通り「的外れ」に終わりやすい。ダイエットの効率を上げるためにも、まずは、ミクロの視点で体の中の脂肪を見つめてみよう。
まず、ぜい肉の正体は「体脂肪」。これは「皮下脂肪」と「内臓脂肪」の二つを総称したもの。全部合わせると体重の約20%を占める、大きな組織だ。ちなみにこの脂肪の割合がおなじみの「体脂肪率」で、肥満の人は30%を超える。
皮下脂肪は、文字通り皮膚の下にある脂肪の層。つく場所によって厚さに違いはあるが、体表面全体を覆っており、体の熱を維持したり、外からの刺激を受け止め、和らげるクッションの役割も果たす。
皮下脂肪のわかりやすさに比べ、間違って理解されやすいのが内臓脂肪だ。そのネーミングから、個々の臓器のまわりにびっちり付着した脂肪の塊をイメージする人も多いが、実際の内臓脂肪は、お腹の中の、内臓が納まっている空間部分(腹腔(ふくくう))の前面に主に存在し、カーテンのように垂れ下がっている。「大きさからいっても形状からしてみても、ちょうどエプロンのようなもの」と、脂肪組織に詳しい東京農業大学の田中越郎教授は説明する。
さらに細かく見ていくと、皮下脂肪も内臓脂肪も、脂肪細胞が無数に集まってできている。脂肪細胞は、中性脂肪を大量に抱えこんで、ぼわっと膨張した状態の細胞。普通の細胞に比べて、容積がなんと数百倍! 細胞としては極めて異質で、おばけみたいな存在だ。
飢餓(きが)に備えて、余ったエネルギーを貯蔵するというのが脂肪細胞の大きな役割だが、実は、単なる中性脂肪の貯蔵庫ではなく、様々なホルモンを分泌して体の機能を調整する働きがあることもわかっている。
脂肪細胞から分泌される大切なホルモンの中で代表的なのは、レプチンやアディポネクチン。レプチンは食欲を抑えて食べすぎを防ぐ働きがあり、アディポネクチンは、傷付いた血管の修復に働く。「脂肪憎し」といえど、適量の脂肪は、こうした“善玉ホルモン”の分泌のためには不可欠なのだ。
ところが、脂肪細胞が中性脂肪をためこみ過ぎて肥大化すると、本来のホルモン分泌のメカニズムが狂い、異常事態が起こる。血栓を溶けにくくするPAI-1(パイワン)、糖尿病を引き起こすTNF-αといった悪い作用をもたらす“悪玉ホルモン”が分泌され始めるのだ。
ちなみに、内臓脂肪は皮下脂肪に比べて、こうした悪玉ホルモンを分泌しやすい。皮下脂肪が多くてぽっちゃりしている人より、スリムだけどお腹だけが出ているメタボ体形の人の方が生活習慣病になりやすいと言われるのはこのためだ。
「やせるため」はもちろん、健康を維持するためにも、肥大化した脂肪細胞をサイズダウンしよう。具体的な方法は次回から。
脂質は細胞の原料にも 脂肪肝は内臓脂肪とは別物!
ひと口に脂肪といっても、体内には数種類の脂肪類(脂質)がある。エネルギー源にならずに細胞の材料になるものも。さらに、よく聞く「脂肪肝」は内臓脂肪と混同されがちだが、全くの別物。主な脂肪用語をマスターしておこう! コレステロール
脂質の一種でホルモンや細胞膜、消化液などの原料になる。食べ物に含まれるほか体内でも合成される。
中性脂肪
脂質の一種で脂肪酸とグリセリンが結合した物質。エネルギー貯蔵用の成分。ここから脂肪酸が分離されてエネルギーが作られる。 リン脂質
脂質の一種で、細胞膜の原料になる。細胞内にウイルスや有害物質が入りこまないようにするためにも必須。
脂肪肝
肝細胞の中に中性脂肪がたまってフォアグラ状になった、「太った肝臓」を指す。脂肪組織である内臓脂肪とは別物。
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