鉄欠乏性貧血は不足している鉄を補給する事で、大部分のケースで簡単に貧血は治癒します。一般に鉄欠乏性貧血と診断され鉄剤を服用した場合、平均0.1〜0.2g/dl/日のペースでヘモグロビンが増加し、約1〜2ヶ月でヘモグロビンは正常化します。
しかしその時点ではまだ貯蔵鉄は十分に補充されていませんので、さらに鉄剤を服用する事が大切です。貧血の程度・鉄欠乏の原因により違いはありますが、半年〜1年かかることが普通です。貯蔵鉄の状態を把握するためには、血清フェリチン値を測定を行います。フェリチンの値が20ng/dl以上あれば貯蔵鉄が十分量まで補充されたと判断し、鉄剤投与を中止しますが、貯蔵鉄を十分回復させても、鉄の喪失の原因が続いている場合は再発しますので、半年〜1年後には一度フェリチンを含めた血液検査で、チェックしましょう。
鉄剤の服用にあたっては、空腹時の投与が吸収の点では優れています(食後又は食事中の投与では空腹時投与の60%の吸収率となります)が、鉄剤には、胃腸障害(吐き気・嘔吐・下痢・便秘・心窩部痛など)という副作用が伴いやすいので、それを避けるために食直後または食事中の服用をすすめることが普通です。
鉄欠乏性貧血は鉄が欠乏するに至った原因を治療しない限り高率に再発しますので、原因検索とその治療が非常に大切です。特に60〜65歳以上の高齢者の鉄欠乏性貧血では、約60%が消化管悪性腫瘍などの悪性疾患によると報告されていますので、注意が必要です。 |