セックスに不必要なものって?エクスタシーの得られない人が増えています。30代で編集の仕事をしているA子さんは、いわゆる男好きがするタイプでお相手には困らないのですが、本命はいません。 セックスにも前向きな彼女は情報を集め、男性にも協力してもらい、何とかエクスタシーを得ようと頑張っているのですが、今ひとつ「あのとき」のような満足は得られないのです。 そんな彼女が恋をしました。お相手は年下のアルバイト君です。おとなしくていかにも「オクテ」な彼を弟のように可愛がっているうちに一線を越えてしまいました。
それ以来、彼はA子さんに夢中で、彼女もまた彼の情熱に応え、恋の炎が燃え上がりました。すると不思議なことに、エクスタシーが蘇ってきたのです。 テクニックの面では未開発の彼なので、A子さんの方から彼を悦ばせることに熱中するうちに、彼女はプライドも羞恥心も放り出し、我を忘れ、気がつくと恍惚の瞬間を迎えることができるようになりました。 『自我』から『無我』になることが大切なぜ??その前に、「オルガスムス(アクメ、オーガズム)」と「エクスタシー」の違いを押さえておきましょう。どちらも性的な快感の高みにおとずれる点ではよく似ています。 「オルガスムスはお医者さんが使う言葉。エクスタシーは詩人が使う言葉」なんていう回答も一応「○」にしておきましょう。 オルガスムスは生理学の言葉です。性的な快感が高まって興奮が増大し、極点にまで達すると男性は射精し、女性も絶頂を体験します。これがオルガスムスです。 これを単純化すれば、刺激と反応(快感)の関係として説明することができます。要するに肉体の問題ですからテクニックが重要です。 一方、エクスタシーは「心の状態」を表します。オルガスムスの際におとずれる(こともある)恍惚とした無我夢中の「心理状態」がエクスタシーです。昔は「忘我の境」などとも翻訳されました。 古代ギリシャの“ekstasis”という言葉が語源で、魂が抜け出した状態を意味します。魂が肉体を離れ、壮大で混沌とした生命の流れとひとつになる、そんな恍惚状態です。自我が消滅した無我の境地。いつも体験できるとは限りません。 エクスタシーは性的なオルガスムの最中だけではなく、お祭や音楽、芸術活動、宗教儀式、スポーツなどで「無我夢中」になっているときに訪れます。いずれの場合も「自我」を忘れることが必要条件です。 現代人は強い自我をもっています。これは素晴らしいことですが、それが必要なときに自我を放り出せない原因にもなっています。「バカになれない」「プライドが許さない」「理性が邪魔をする」…。A子さんもそうでした。 ところが恋する相手を喜ばせようと無我夢中になったときに分厚い自我の鎧が崩れ去り、エクスタシーが訪れたのです。 愛や信頼、熱中、価値や意味への確信、そんな「青臭い」ものが、実は、天国への鍵となるのです。 |