下痢の漢方薬療法
下痢や便秘は、本人にしてみたら、大問題です。今回は、下痢止めを飲んだときは、いいけど、しつこく続く、何ヶ月、何年と続く、下痢について、漢方の視点から、考えてみます。 胃腸はとってもデリケートで、ストレスの影響を受けやすい臓器です。特に胃腸は、余分な「湿」に弱く、水分の取りすぎや、高温多湿は大敵です。
中医学で見る下痢
漢方では、下痢は、T.実証とU.虚証の二つのタイプに分けています。
T.実証のタイプ
水分の取りすぎや、冷房や、夏バテや食あたりなどが原因で、体に余分な「湿」が、たまって胃腸機能の低下を招いたもの。 体質や症状によって、さらに@寒証(寒湿困脾)とA熱証(脾胃湿熱)に分かれます。
@寒証(寒湿困脾)の原因
ビールやジュース、生ものなどの取りすぎや冷房によって体を冷やしたことが原因で、胃腸の機能が低下して、水分代謝が滞り、下痢を招いたもの。 症状としては、下痢(泥状便)、食欲不振、口が粘つく、むくみやすい、胸がつかえる、吐き気、腹痛など。
A熱証(脾胃湿熱)の原因
暴飲暴食や食あたりや、細菌やウイルスの体への侵入により、消化不良をおこし、熱性の下痢を招いたもの。 症状としては下痢(便のにおいが強く、回数も多い)、消化不良、黄疸など。
U.虚証のタイプ
漢方では、胃腸の働きは「脾」がつかさどると考えています。「脾」は、元気のもとである「気」を全身に運んでいます。「脾」が、弱れば、「気」が不足し、下痢を引きおこします。 加齢により、清気の源である「腎」の働きが低下した人や、もともと胃腸の弱い方に多い。 体質や症状により、@「脾気虚」とA「脾腎陽虚」の二つのタイプに分けています。
@脾気虚の原因
過労や心身のストレスや、生活の不摂生や、虚弱体質などが原因で、気のエネルギーが不足して、胃腸機能が低下して、下痢するもの。 症状としては下痢(泥状便),顔色が悪くなり、疲れやすくいつもだるい、食後すぐ眠くなる、食後お腹が張りやすい、ゲッフ゜がでやすい、胃下垂、子宮下垂、脱肛など。
A脾腎陽虚の原因
脾気虚の長期化や、毎日、アイスクリームを食べたり、加齢による「腎」の機能低下によって体が冷えて、下痢するもの。 症状としては下痢(水様性の便、シャーと出てしまう便)、みぞおちあたりが痛む、むくみやすい、尿がでにくい、尿の色がうすい又は透明で多量に出るなど。
下痢にいいと言われる漢方薬
【桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)】 過敏性腸症候群にも効果があるといわれる漢方です。下痢や便秘を繰り返したり、お腹の痛みが強い方に効果があると言われています。体を温める作用も強いため、普段から体力がない、血行が悪いと感じている場合におすすめです。
【真武湯(しんぶとう)】 体から余分な水分を出す効果があり、下痢によいとされる漢方です。もともと冷え性であったり、体温が低い方に向いています。
【啓脾湯(けいひとう)】 真武湯と同じく、もともと冷え性の方や、体力があまりない方向けの漢方で、胃腸の働きを助けて消化不良を改善する効果があると考えられています。子供にも用いられる下痢の漢方です。
【人参湯(にんじんとう)】 にんじんの力によって、胃腸の働きを高めてくれる効果がある漢方です。余分な水分を追い出したり、消化をよくする作用があります。
【六君子湯(りっくんしとう)】 胃腸の働きをよくして、胃もたれや食欲不振、下痢を改善してくれる漢方です。
【五苓散(ごれいさん)】 体内の水分の循環を改善してくれる効果があると考えられています。下痢のほか、頭痛や嘔吐、吐き気などにも効果があります。利尿作用があるので、風邪などの時にも悪い菌などを外に出してくれると考えられています。 |